「デザイン」はいつから?

直木賞を受賞した中島京子『小さいおうち』を読みました。
戦前から戦中の東京が舞台です。

今は昔。ブルーノ・タウト研究にひっぱりこまれ
(その成果のひとつが『タウトが撮ったニッポン』)
彼の来日した昭和8年から離日した11年までの人々の意識
などを調べる必要から、当時の人の日記をずいぶん読みました。
永井荷風、野上弥生子、古川ロッパの日記を同時並行して
読んでいく・・・という地味な作業なんですが、
これがじつにおもしろかったんですねー。
自分の任務をすっかり忘れて読みふけったものです。

というわけで、この時代を描いた小説なども読むのが好きで
『小さいおうち』も手にしたのでした。
この『小さいおうち』には、なんと「帝美」を卒業した
デザイナーが登場します。「帝美」とは「帝国美術学校」、
そうです、わがムサビの前身!(当時は男子校)

そのデザイナー「ぼくは甘いものは食わないんですが、
このビスケットはデザインがいいから」なんて、
資生堂の花椿ビスケットを土産にするような、ちょっと
気取った奴。
「母方の祖父が宮大工だったので、建物には子供のころから
興味がありました。だんだん、デザインのほうに関心が移って」
とも云っています。
昭和13年頃の会話なんですけど、当時「デザイン」なんて
云わないはず。「図案」とか「意匠」と云わねば・・・
些末なことは気になったものの、たいへん楽しめる小説です。
夏のオススメ。
[図書委員:ハムコ]

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