大曲都市訳『カウンターパンチ』 (5)
できあがったばかりの本は、たいていは10冊単位でクラフト紙に梱包されて、製本所から版元に届く。「納品でーす」と、この包みがテーブルに置かれてもその梱包をすぐにあけることができない。誰かにあけてもらって、そっと後ろからのぞきこむ。制作担当の呑猫が、きちんと座って1ページずつ繰る。奥付まで確認して「はい、ノンブルは通っています」という声を聞いてから、恐る恐る手に取る。手にした瞬間、本がすーっと宙に浮く。ああぁぁ、これで、もうわたしの手からすっかり離れて、遠いとおい見知らぬ読者のもとに行ってしまうのだ!こんな話はカメラマンの山田能弘さんにしたことはない。にもかかわらず、その瞬間を切り取ったような書影...