黒沢さんの蔵書
わが出版局が「4年制通信教育課程開設準備室教材班」という準備段階にあった2001年から数年にわたって、制作を担当された黒沢哲夫氏が鬼籍に入られて5年がたつ。先日、ご遺族から「蔵書を処分したいので、御入り用のものがあれば、どうぞお持ちください」と連絡をいただき、お宅にうかがいました。二間幅、二層スライド式の重々しい書架でまず目にはいるのは鏡花全集。「ひゃあ、てっちゃん、鏡花が好きだったの?」われわれは、氏に向かっては「黒沢さん」と言っていたが、影では親しみを込めて「てっちゃん」と呼んでいたので、つい奥様の前で「てっちゃん」と云ってしまう。奥様はニコニコしておられる。岩波のアリストテレス全集、プラ...