『美術教育資料研究』

担当した教科書は印刷・製本中。その一冊が『美術教育資料研究』。
明治以降、国内外の美術教育に関する制度の変遷や今に繋がる重要な教育実践・文献など、多くの資料を取り上げて著者である大坪圭輔先生(武蔵野美術大学教授・教職課程)が解説を行っています。400頁を超えるヴォリューム。

現在は時間数が減らされたりして厳しい状況にある美術の授業ですが、数学や語学などの他の領域とは違う役割が求められているということにおいて、今も昔も変わりなく重要なものと思います。その求められているものとは、子どもたち各々が各々らしくその後を生きるために必要な、自らを表現する力、他人の表現を感受する力をつける、あるいは表現の力を実感させるということでしょうか。自らがうまく表現できなくとも、美術やデザイン(に限りませんが)といった表現に関心をもち鑑賞できるようになるだけでも、人生は豊かになるはずです。美術の授業のみならず美術やデザインは世の中で、なくてもいいと真っ先に切り捨てられがちですが、実は最も人間らしいことのひとつが美を感じたり、おもしろがったり、考えさえられたりすることではないのでしょうか。数学者は、より美しい数式を追い求めているというではありませんか。皆さん、何かものを買うときにそのデザインを気にしないことなんて考えられますか? 

計算ができるようになる、他国の言語がわかるようになる、といった明らかな成果がわかりづらい分野だけに、それを教えるのも大変なことです。でもおそらく、その教える立場につこうとする人たちは皆、美術やデザインが大好きな人たちのはず。きっと熱意をもって、子どもたちと向き合い、美術やデザインのおもしろさを伝えていってくれることでしょう。美術の授業やせんせいに救われる子どもたちも大勢いるように思います。
本書は、未来の美術のせんせいが美術教育のこれまでを知り、これからを考えるのに大いに役立つはずです。百年近く前に行われていた実践でも、現在の美術教育に充分役立つというか、心にとどめておかなければいけない基本的な美術教育の理念が変わらずにあるということがよくわかりますよ。
(編集:凹山人)

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