100年目の「贈与」その2

来年1月刊行予定の、小幡正敏 著『見知らぬ者への贈与ー贈与とセキュリティの社会学』はただいま外部校正者の精緻なチェックのもとにありますが、ちょっと気の早い宣伝の第2弾です。

著者が「贈与と交換」というテーマに出会ったのは1980年代初頭のこと。それから30年。新自由主義的な政治経済の手法が隅々にまで行きわたり、市場の論理や効率化が当然のこととして語られ「格差社会」という言葉が日常的な言葉になった社会に対して、「贈与と交換」という視点でもって社会的連帯を探ることができないかーこれが本書の出発点となります。

マルセル・モースは1923-24年に執筆された贈与論の結論部で、20世紀初頭に西欧諸国で整備され始めた各種の社会保険に大きな期待を寄せていることを表明しました。第一次世界大戦とロシア革命によって多くのものが失われ、それまで確固としてあった社会のシステムが大きく揺らいだ時代でした。

本書では、様々な論説を引いて贈与の意味を多角的に探り、同時に、現代の具体的な社会のシステムや事象を参照し、現代社会に生き続ける贈与行為にどのような可能性があるのかを繰り返し検証します。それは緻密で精緻な作業なのですが、所々で(t:eehにとっては美味しいお菓子のように)社会喪失者としてのトリスタンとイゾルデという読み解きや、カミュの『ペスト』に描かれた、封鎖都市オランと感染症と数字の話も出てきます。それが「贈与とセキュリティと社会」にどうリンクしているのか、これも楽しみにしてください。

 

編集:t:eeh

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